当たり前のこと
人が死ぬ、ってことは、とても個人的なこと。
当たり前じゃない。
その人や家族や関係者にとっては、一大事や。
身近な人が亡くなって、混乱して、悲しい。
おかんにも、そんなことがあった。
あんたたちも覚えてるやろ?
特に、死ぬと思っていなかった人が突然死んでしまった時は、しんどかった。
混乱するし、気持ちもぐちゃぐちゃになるし。
でも、その葬式の時に、だれか忘れたけど、どっかのおばちゃんが、
「寿命やったんやなあ」
と、一言つぶやいた。
母さんは、その言葉にハッとしたし、救われた。
「寿命やったんやなあ」
なんて、ありきたりの言葉かもしれへん。
そやけど、人が死ぬ、ということを受け入れる言葉のように聞こえたんよ。
人は、死ぬわなあ。
それは、当たり前のことや。
個人的な感情はいろいろ湧いてくる。
そやけど、結局、何を言っても、人は死ぬんや。
一般論は、冷たく響くかもしれへんけど、真実や。
最初は、泣いて、辛くて、わけがわからへんかもしれんけど、
最後は、一般論として受け止められるようになる。
おかんやおとんが、どんな死に方しても、それは寿命やで。
「もし~だったら」は、あらへんのやで。
大丈夫。
おかんとおとんは、幸せな人生やったことだけは、間違いないでな。